木靴作り

伝統の技術


木靴づくりの技術

 

その他

くり抜き

はじめの入刀 いよいよ木靴つくりで最もハードな作業、くり抜きです。 仕上がりが足にぴったり合うか合わないかで、木靴の良しあしが決まります。

昔は、その木靴を作る職人によって木靴のモデル(型)が決まっていました。 高い・低い、つま先が丸い・とがっている、上に向かって反っている・反っていないなど。 しかしどんなモデルであっても、履いた時足にフィットすることは必須です。

丸い「のみ」
上の写真に見られるように、初めの一刀はかかとの部分の穴です。 この部分にはFig12のような丸い「のみ」を使います。

これは木靴職人の弟子が(12歳くらいで)最初にさせてもらえる仕事でした。 理由はいたってシンプルで、難しい木靴づくりの仕事の中でこの最初の一刀は最も簡単なので、若い弟子にも任せることができたのです。

かかとから内部へ
プロセスは以下の通り。photo25のように、足の甲部分からのみを入れます。 一度に深くは彫らず、浅く彫っていきます。一気にのみを入れると、足の甲部分にひび割れが入ることがあるのです。 その後かかとの方からも彫っていきます(photo26)。

いよいよ入刀
のみが抜けなくなるのを防ぐため、少しずつ削っていきます。 薄く削れるように一刀ごとにのみを少し回し、足の甲部分の割れを防ぎます。これでくり抜きの第一段階が終了です。

ドリルナイフ
かかとを入れる部分を十分くり抜いた後は、ドリルナイフ(Fig13)で仕上げをします。

ドリルナイフの使用 この道具は、これまでのものと全く違う使い方をします。 こういった多様な道具を使いこなすことも、この仕事の醍醐味の一つです。


このくり抜き作業は、正確に注意深く進めなければなりません。 この段階でかかとの厚みのみならず靴の深さも決まり、つまりは履き心地がこの段階にかかっているのです。 たいへんに力の要る作業です。

肘から先全部を使う Photo29に見られるように、職人は手先だけでなく肘から先全体を使って作業しています。 すべて手作業でくり抜くため、このようにする必要が生じるのです。 ナイフの柄を靴の一部に押し付けて作業すれば楽ですが、ひび割れの危険性があるので不可能です。 この作用が終了した時点で、靴のかかと部分の穴が完成です。

くり抜き こういったドリルは、スクープもしくはスプーンと呼ばれます。スクープ大、仕上げ用ドリル、スプーン大・小など、いくつかのタイプがあります。 ドリル類を使って「ドリルする」作業は、オランダ南部のリンブルフ州ではuitheulen、ブラバント州ではuitboren、アハターフックではschrooienなど、オランダの中でも地方によってさまざまな方言で呼ばれています。
くり抜き

ドリルの使用にはとりわけ大変な労力と握力が必要です。 職人は木靴の内部に十分な空洞ができ次第この作業を止めます(後ほど必要が生じれば若干の修正を加えます)。